未来に希望が持てた

石田靖雅先生が「PD-1と新しいがん免疫療法」を講演

平和会公開医療講演会




予想だにしなかった台風の接近で悪天候となった7月27日(土)午後、西大寺にある奈良県歯科医師会館講堂にて、「最先端を知ろう 健康を科学し役立てる」をテーマに、平和会公開医療講演会を開催しました。メインは、石田靖雅奈良先端科学技術大学院大学准教授による「PD-1と新しいがん免疫療法~2018年ノーベル生理学医学賞への軌跡、そして今後の課題~」の講演です。



石田先生は、本佑氏の2018年ノーベル生理学医学賞受賞のきっかけとなったPD-1の発見者であり、吉田病院の医療活動(健診センター)にも長らく協力いただいています。職員の間でお話を聞く機会をと考えていたところ、平和会の「医療機関と住民の協同で健康運動教室を発展させる指導者養成事業」が福祉医療機構(WAM)の社会福祉振興助成事業に選ばれたのを機会に、その報告会を兼ねて市民を対象とした公開講演会を開くことになったものです。



講演は、ノーベル賞授賞式の様子も含まれていてわかりやすいばかりか、PD-1発見の件では、サブストラクション(引き算)法を知るなどいくつもの出会いや、「免疫学における『自己』」の研究がしたいとの強い思いと追及の結実であったことがわかり、聞き手のみなさんの多くがまるでドラマかのような感動を覚えられたようです。


また、T細胞を抑制するPD-1の働きを悪用するがん細胞にたいしPD-1抗体でPD-L1からのシグナルを遮断し細胞殺傷活性を復活させる、いわゆるがん免疫療法の話にとどまらず、今後の研究課題にまで及びました。

3つの事実(・PD-1を持たないマウスは、老齢期になって初めて自己免疫疾患を発症する・T細胞は、がんのゲノム変異に由来する変異ペプチドを認識して活性化されるが、PD-1はそのようなT細胞の活性化を抑制してしまう・ゲノム変異が多く集積したがん細胞ほど、PD-1抗体の治療によく反応する)を一元的に、統一して理解できるモデル※ の想定は、進化の過程が垣間見え興味深く、また聴衆にとって元気が出てくるものでした。

「がん患者、その家族にとって、新しい治療の発見は、本当に希望です.難しい内容であっても、その内容を聞いて、未来に希望を持つことができることは、とてもありがたいです」と感想が寄せられています。

なお、WAM助成事業の報告についても、参加者アンケートでは皆さん理解を示してくださっており、中には「若かったらやってみたかった」など、積極的な関心を示す方も少なくなく、事務局としてうれしいことです。

今講演会には、奈良市医師会より谷掛駿介会長がお越しくださり、平和会がすすめるWAM事業について高く評価するあいさつをいただき、川げん奈良市長からは祝辞をいただきました。

参加者は93名。講師の石田先生はじめ、ビデオ講演いただいた安田先生や、来賓、後援団体、司会の田中明美先生ほか要員の皆様含め、御礼申し上げます。
 
※「本日のサマリー」

□PD-1は、動物個体の老化とともに「移ろいゆくself」に対する「自己免疫応答」を防ぐために、進化の過程で出現した分子ではないか?

□がんに対する免疫応答は、「移ろいゆくself」に対する自己免疫応答」のひとつとして、PD-1により抑制されている?

□抗体でPD-1の機能をブロックすると、「移ろいゆくself」に対する「自己免疫応答」が再活性化されてしまうが、selfから最も大きく「移ろった」がん細胞に対する免疫応答が一番強く引き出される?


(当日配布資料より)


 

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